お姫様に花束を


「この町、温泉もあるんですか?」


俺が驚いたように聞くと、ゲンさんは大きく頷いた。


「昔、掘ったら出てきおった」


いや……温泉ってそんな簡単に出るもんじゃないと思うけど……。

でも……そっか。

温泉もあるのか……。


「春夏秋冬、どの季節でも楽しめるんですね」


カノンが笑顔でそう言えば、ゲンさんは嬉しそうに頷いた。


「それがこの町の良いところじゃ。
いつ来てもそれぞれの季節に合ったものが楽しめる。
わしらの大切な宝物じゃ」


……宝物、か。


カノンは優しく微笑む。

ゲンさんも嬉しそうで……町民の皆さんも。


「あ、あの……兄ちゃん……」


すると、不意に男性が俺に声をかけてきた。

この人は……さっき石を投げてきた人だ。


「大丈夫か……?
背中……」

「はい。もう平気です」

「悪かったな……。
つい頭に血が上っちまって……。
本当にすまなかった」


そう言いながら男性は俺に頭を下げる。


この人……本当は心の優しい人なんだろうな。


俺は頭を下げる男性を見ながらそんなことを思った。