お姫様に花束を


「リオン!」

「った………」


ゴロッと音がして石が地面に落ちる。

結構デカいじゃん……しかも何か尖ってるし……。

こんな危ないもの投げるなよ……。


思ってたよりも大きかった痛みに顔を歪ませながらそんなことを思う。


「大丈夫……?」


カノンが心配そうに俺の顔を覗きこむ。


「平気平気」


本当は割と痛いけど、強がって軽く笑みを見せる。


まだ痛みのある背中を擦りながら俺は町民の方へと体を向ける。


「す、すまん……。
当てるつもりじゃ……。
た、ただ脅そうと思って……」


恐らく石を投げたと思われる男性がオロオロしながらそう言う。


他の町民達もすっかり黙ってしまった。


「……俺は大丈夫です。
だから……彼女の話を聞いてあげてください」


カノンと町民が驚いたように俺を見る。


「皆さんの気持ちは分かります。
皆さんが町を守りたい気持ちも……。
……ですが、文句を言う前にまず彼女の話を一度聞いてみてください。
それから文句言うなり訴えるなり……どうするか決めてくれませんか?
お互いに一方的に声を荒げてるだけじゃ、伝わるものも伝わらないでしょう?」


町民はみんな俯いて黙りこむ。


……すると、カノンが俺の背中にそっと触れた。

俺がカノンの顔を見れば、カノンは俺を見て優しく微笑んだ。

そして……


「ありがとう」


俺にしか聞こえない程の小さな声でそう言うと……前に出て行き、堂々とした姿で町民達の前に立った。