お姫様に花束を


誰もカノンの言うことを聞こうとしない。

それぞれが言いたい放題に野次を飛ばす。

……それでもカノンは必死に声を出す。

町民達に自分の話を聞いてもらいたくて……。


「もうお前らにはうんざりなんだよ!」

「町のためとか言って、自分達のためじゃないのか!」

「そうだそうだ!」


……町の人達も……必死なんだ……。

自分達の町を守るために……。


「だから、私は……!!」

「いい加減にしろ!
早く出てけ!!」


……そんな声が聞こえた瞬間。

カノンに向かって……石が投げられた。

野球ボールぐらいはありそうな、結構大きめの石……。

カノン目がけてまっすぐと飛んで行く石……。

あんなのが当たったら……!


「カノン!」


俺はなりふり構わずカノンの元へ走る。

そして、前からカノンの体を守るようにギュッと力強く抱きしめる。


……程なくして、俺の背中に鈍い痛みが走った。