お姫様に花束を


「……きっとこれが十八年前に最後に私達がここに来たときの写真ね」


カノンは写真を見つめながらポツリと呟く。


「……いい写真だな」

「……うん。
本当に……」


……そう言いながらカノンはまだ残っているアルバムのページを捲る。

すると、次のページの写真を見てカノンは目を大きく見開いた。


「ここ……この町の海……?」


浜辺ではしゃぐ男の子と女の子。

そしてそんな二人を優しい表情で見つめる男性と女性。


「……カノン、言ってたよな。
昔海で泳いだ記憶が何となくあるって……。
それって……もしかしてこのことじゃ……」


……きっと家族であの海に行ったんだ。

それを詳しくは覚えていないけれど、カノンの記憶の片隅にちゃんと残っていて……


「………私……」


……俺はカノンの肩をそっと抱いた。

カノンは俺に寄りかかるようにして写真を見つめる……。