今日、俺達はこの別荘に泊まることにした。
ゲンさんはカギを俺達に渡すと家へと帰っていった。
カノンはソファに座り、ふぅと小さくため息をつく。
「……まさか、私がここに来たことがあったなんて……」
「まぁ、三歳ぐらいじゃな。
俺だってその頃のことはほとんど覚えてないし」
「それはそうなんだけど……」
カノンはソファにもたれ掛かりながらもう一度ため息をつく。
「……家族で……来てたんだなぁって」
「え?」
「私……家族としての思い出なんてほとんどないから。
公務で四人で出掛けたことはあるけど……その間も両親は仕事で私はお兄様と二人で遊んでただけだったから」
カノンはそう言いながら苦笑いした。
「……でも、別荘に泊まったってことは……きっとここへはプライベートで来たのね。
……私が覚えていないだけで、ちゃんと家族として過ごした時間はあったんだ……」
カノンは切なそうに瞳を揺らしながら……静かにそう言った。

