「城から帰った後……俺、ずっとカノンのことばかり考えてた」

「リオン……」

「絶対届かない存在だと思って……忘れようとしたけどさ。
……でも、忘れられなくて。
俺がどれだけカノンのことが好きかって……思い知らされた」


……カノンが俺の腕にそっと手を添える。

俺よりも小さなその手がすごく温かくて……


「……私も。
私も……そう」


カノンが俺の腕をそっと撫でる。


「……私……全部諦めてた。
いくら私が頑張っても……結局、最後は国王様の一言で全部決まってしまう。
私に自由はないって……。
……結婚相手も勝手に決められて……きっとそのまま自分一人では何もできないまま死んでいくんだって……ずっとそう思ってた……。
……でも……」


カノンが顔を上げ、俺の方を見る。

綺麗な瞳が俺を捉える。


「……初めて、思ったの。
……リオンだけは……諦めたくないって。
私の中にも……こんな気持ちがあるんだって……」


……俺も初めてだよ。

こんなに……一人の人を好きになってしまったのは。

……こんなに……愛しいと思ったのは。


「カノン……」


俺はカノンの小さな柔らかい唇に……そっと口づけた。


穏やかな……幸せな時間だった。