「この町に、しかもこの時期に観光に来る若者なんて物珍しいと思って見ておったが……お前さん達、ただの観光客ではないな」
おじいさんに鋭い目で見られ、俺達の間に緊張が走る……。
……バレた?
こんな早く……?
ウソだろ……。
俺はおじいさんの目からカノンを庇うようにカノンを背に隠す。
……ゴクリと唾を飲み込む。
走って逃げようか……そんなことを思った瞬間。
おじいさんは俺達を見てにこりと笑った。
「お前さん達、この町の自然を観察に来た学生さん達じゃろう?」
「「……え?」」
……おじいさんの口から思ってもみなかった言葉が出て、俺達はポカンとした。
「なんじゃ、違ったかの?」
「い、いえ!
正にその通りです!」
俺が慌ててそう言うと、おじいさんは目を細めて嬉しそうに笑った。
「そうか、そうか。
何年ぶりかのう……こうして若いモンがこの町の自然観察に来るなんて……」
「何年ぶり……?
今はそういう人達は来ないんですか?」
カノンがそう聞くと、おじいさんは遠くを見つめながら少し寂しそうな表情で口を開いた。

