「どうしたの?リオン」


何も答えない俺をカノン様は不思議そうな目で見つめる。

可愛い……だけど、今はそれどころじゃない。


「カノン様の御好意はとてもありがたいのですが……私はそんなお礼をしていただくような大層なことはしていませんので……」


とにかく、お礼なんていただけない。

本当に大したことはしてないし、何より王女様からお礼なんて……


「でも、あなたのお陰で助かったし………」


そう言いながらカノン様は俺の顔を見た。

けど、俺の表情が変わらないのを見て、カノン様はしょぼんとうつ向いてしまった。


「そう……そっか……」


明らかに落ち込んだ様子のカノン様。


「あ、あの、カノン様……」


焦った俺がカノン様に話しかけると、後ろに控えていた執事……ウェルスさん?が見かねたように割り込んできた。


「リオン様、どうかお気になさらずに。
……カノン様。
あまりリオン様を困らせてはいけません」

「そうだけど……」


カノン様はしょぼんとしたまま顔を上げない。

すると、ウェルスさんはわざとらしく大きなため息をついた。


「カノン様、やはり本当はただ外に出たかっただけなのですね」


ウェルスさんがそう言うと、カノン様はピクッと反応した。

外に出たかっただけ……?


「でしたら、これ以上ここにいるわけにはいきません。
リオン様にも大変失礼です」

「けどっ……お礼をしたいと思ったのは本当で……」

「えぇ、それは分かっております。
ですが、リオン様がカノン様からのお礼を拒否された今、カノン様がいつまでもここにいらっしゃるのはただの迷惑でございます」


すごいはっきり言うな……この執事……。


カノン様の方を見れば、しょんぼりしたまま俯いている……。


「あ、あの……」


何だか可哀想に思えた俺は、思わず声を出していた。