お姫様に花束を


パン屋を出て、私はまた歩き出した。


……この商店街にいると、私の知らなかったあたりまえのことを知ることができる。


リオン、ここは良いところだって言ってたっけ……。


……本当に、良いところ。

温かい場所……。


「あ……」


あれは……。

……お肉屋さんだ!


私は思わず小走りで駆け寄る。


「いらっしゃ……あぁ!」

「こんにちは、ジェイクさん」


ジェイクさんは私を見てひどく驚いたような顔をした。


「か……か……カノっ……」

「しっ!」


私がそう言えば、ジェイクさんは慌てて手で口元を押さえた。

そして、小声で話しかけてくる。


「カノン様……こんなところで何を……」

「え……あ……ちょっと……」


……何をしてるのかは自分でもよく分かっていない。

ただ……