お姫様に花束を


「お嬢ちゃん、はい。
焼き立てよ」


そう言いながら女性は私にベーグルを差し出した。

焼き立てというだけあってとても美味しそうだった。


「え……でも……。
……私、お金持ってなくて……」

「いいのよ。
サービスよ、サービス」


サービス……。

この前お肉屋さんに行った時……ジェイクさんもサービスだって言ってコロッケをくれた。

……たまたま会っただけの私にこんなに良くしてくれるなんて……。


「……ありがとうございます。
いただきます」


ベーグルを受けとると、まだ温かかった。

一口かじると、美味しさが口いっぱいに広がって思わず笑顔になった。


「美味しい……」

「でしょ?
辛いことや落ち込むようなことがあってもね、ウチのパンを食べればたちまち元気になるんだから」


女性はそう得意気に笑って言った。


「それより、アンタ……何かどこかで見たことあるような顔してるね……」

「え……?」


……バレた?


そういえば私……勢いで出てきたから、変装も何もしてない……!


「あ……」


女性は私の顔を見つめたままそう声を出すと、驚いたように目を見開いた。