カノンside


「……お願いします。
私をナツメ町に行かせてください」


……私は父である国王様の前で頭を下げ、懇願した。

このままここにいても何も変わらない。

どうしても、自分の目で実際に確かめてみたかった。


「……ダメだと何度言ったら分かるんだ」

「何度言われても諦めません。
私は……」

「どうしてお前はそう物分かりが悪いんだ」


国王様は鋭い目で私を見た。

それは……父が娘に向ける目ではない。


「……あなた、そんなにきつく言わなくても……」


母である王妃様が国王様を咎める。

だけど、それはほぼ無意味に近い。


「カノンは一生懸命なんですよ。
だから、そんなに頭ごなしに反対しなくても……」

「今カノンがナツメ町に行っても火に油を注ぐだけだ。
余計にデモが激しくなったらどう責任を取るつもりなんだ」


……この人が反対しているのは私のためじゃない。

……自分のためだ。