お姫様に花束を




その日、俺は家で大学の勉強をしていた。

夏休みもあと少しだ。

少しでも鈍った頭を働かせないと。

授業についていけなくなったら困る。


……というのは言い訳で、本当は少しでも何かに打ち込んでカノンのことを忘れたいだけだった。


テレビをつければ王室のことが報道されるし、ナツメ町のデモのことも……。


それらを見れば思い出してしまう。

だから、テレビもつけない。


そんな生活をしていた時だった。


ピンポーン……と、珍しくインターホンが静かな部屋に鳴り響いた。


誰だ?

滅多に人が来ることはない。

友達も家に呼ぶことはあまりない。

狭いし。


そんなことを思いながら重い腰を上げた。