お姫様に花束を


それからバイトも再開して、俺は元の生活に戻りつつあった。

忘れようとした。

でも、カノンの笑顔が……温もりが、俺の中からいなくならない。


「……バカか、俺は」


いくら想ったところで……それは叶わないのに。

想えば想うほど辛くなるだけだ。


「リオン。それ、そっちに運んどいて」

「はい」


……いずれ、時の流れが忘れさせてくれる。


そう思いながらバイトに打ち込んだ。


……そういえば、ここでカノンにカクテル作ってやったんだっけ。


……いや、ダメだ、そんなこと思い出しちゃ。


……余計に忘れられなくなる。


「リオーン、これも頼むー」

「はいはーい」


こんな未練がましい日々を送って……気づいたら、城を出てからあっという間に一週間が経過していた。