視界に映るのは、“パヴェ・ド・ショコラ”。


それが降って来る映像がやけにスローモーションに見えて、まるで降雪のように思えた。


「【失恋ショコラ】の小説家は、俺だよ」


それは、読んだ瞬間からわかっていた事…。


だけど…


「あれを読んで、何で伝わらねぇんだよ」


小説家の想いまで、本物(ノンフィクション)だとは思わなかったのだ。


てっきり篠原の虚構だと思っていたそれも、れっきとした事実だったらしい。


「その上、俺の渾身の作品に文句付けやがって……。本当、ムカつく」


眉を寄せたままの彼が、再び舌打ちを響かせた。