曖昧ショコラ【短】

体の奥底から沸々と込み上げて来るのは、怒りとは違う。


それにとてもよく似た感情だとは思うけど、あたしは怒ってなんかいないのだ。


だけど…


「だったら、本音を言え」


絶対的な圧力を掛けるような篠原に、あたしの中の何かがプツリと切れた。


一晩中頭から追い出せなかった、あの夜の情事…。


あたしにとっては胸の奥に深く刻まれてしまう程の出来事だったのに、篠原にとっては小説のワンシーンに過ぎなかった。


ずっと考えて辿り着いた結論はどこか残酷さを孕んでいて、胸の奥をジワジワと抉(エグ)り続けている。


あぁ、そっか……