曖昧ショコラ【短】

珍しく自らコーヒーを淹れてくれた篠原はやっぱり気味が悪くて、カップに手を伸ばす事が出来ない。


「……で?」


そんなあたしを余所に、彼からは催促混じりの一文字が飛んで来た。


篠原は、あたしに何を言わせたいのだろう。


あたしは、彼の望む言葉なんて返せないのに…


「感想は?」


再び飛んで来たのは、やっぱりあたしの所感(ショカン)を求める言葉。


「おい」


思わず口をつきそうだった言葉を飲み込み、代わりに用意していた物を声にする。


「素晴らしい作品だと思います」


その直後、篠原が眉をグッと寄せた。