一睡も出来ないまま迎えた翌日、一度出社した後で篠原の家に向かった。


今まで、こんなにも足取りが重いと感じた事は無い。


幾度と無く漏れるため息にまた気が重くなり、何とか理由を付けて逃げ出せないかと考えてみたけど…


その後の仕打ちが恐くて、やっぱりそれは出来なかった。


それでも最後の悪足掻(ワルアガ)きで、オートロックのマンションのエントランスでしばらくの間佇(タタズ)んでみる。


無意味な事だとわかってはいたけど、少しでも時間を稼ぎたかったのだ。


ただ、それも結局は益々気が重くなる要因だと気付いて、渋々部屋の番号を押した。