嘘だ、絶対嘘だ。


普通なら、「顔洗ってこいよ」で、終了じゃない?


まりあの頭は混乱を極めた。



「……嘘……」


「……お前が信じようが信じまいが、どんな妄想をしようが、俺には関係ない」



瑛はそれだけ言うと、さっさと立ち去ってしまった。



(なんでそんな誤解で、最低だなどと言われなければならないんだ)



苛立ちはおさまることを知らず、瑛は一つ、舌打ちをした。


まりあに誤解されていたことが、心外でならない。


どうして俺が、鬼頭に手をださなければならないんだ。


鬼頭は確かに可愛いが、それは妹的、むしろペット的な意味合いであって……


性的欲求を感じたことは、一度だってないというのに。


恋心、というものが自分にあるとしたならば。


それは、まったく違う方向に向いているというのに。