幕末桜

「はい。」

私はそう呟いた。

さっき母様と父様に聞いたばかりだったから。

けれど私は今でもこの状態が理解出来ずにいた。

私と姫桜様が居るこの場所が何処なのか。

あきらかに母様と父様といた庭の桜の木の下では無い。

辺りは真っ白で、桜の花びらと平安時代の女性が着る十二単をまとった桜姫様と、

美しい桜の着物をまとった私しかいない。

「私は貴方の前世の姿なの」

私が疑問の渦に埋もれていると桜姫様が口を開いた。

確かに…

そのお声もお顔も私に似ている気がする。

「沢山の疑問を抱えていると思うわ。けれどね…」

桜姫様がそこまで言うとまた私の意識が薄れてきた。

「…目覚めの時ね。……蝶、その力で…己のその力で……救いなさい……、蝶……」

かすかだがはっきりとそう聞こえた。