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ライブ当日は超強風曇り空。
台風並の風音が街中に吹き荒れてる。


そんな中揃って3時に会場入りした俺らは
すぐにリハーサル開始。

この十日間
みっちり練習に励んだかいあって
ステージでの久々の演奏も滞りなく終了。

かなり手応えのある仕上がりになった。

きっとライブも成功する。
そう、思う。


――なのに何で俺はこんな気持ちで
楽屋に一人でいるんだろう。


今は4時10分。

リハを終えたアキとケンゴは
久々会った今日の対バン相手と談笑中で
俺だけスルリとその輪から抜けてきた。


キタネー壁に囲まれた部屋で
ボロイパイプ椅子に座り
シーソーのように脚を揺らして
クリーム色の天井を見上げてみる。

ついでに取り出した携帯の画面を見つめ
深いため息を吐いた。

……って超諦めわりぃ。


だって俺は『賭に負けた』のに――。


――あの夜あれから
やっぱりシンは戻って来なくて
翌日の朝寝不足のまま地元に戻った俺。

アキやケンゴにはすでに電話で
軽くあらましを説明してたから
これといって追加の話もないまま
放課後練習に参加した。


それでも今の今までしつこいながらも
何度もシンに電話を入れてみたものの
一回も奴は出ず
合わせて折り返しもなし。


タイムアウト。
完全敗北。


沈みそうになる気持ちをごまかしたくて
タバコを取り出そうと
デニムのポケットを漁ったら
別の物がカサリと指先に触れた。


――あ、


クリーム色を背景にして
それを掲げるように眺めてみる。

何度見ても変わらない
晴れやかに笑うシンの顔。


もちろんこれは何の許可もなく
あいつの部屋から持ち出した
ケイとシンらのスナップ写真で

また盛大にため息をつこうとした瞬間
ガチャリと部屋のドアが開いた。