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「……やっぱ……駄目……か」


荒い呼吸の合間に呟いた声は
すぐに暗がりの中に吸い込まれていく。


目の前には
さっき新幹線を降りた最寄り駅。

普段の三倍の速さで
ここまで到着した訳だけど。


終電の時間はとうに過ぎた今
駅の入口の分厚いシャッターが
俺の行く手を拒んでて。

……って中に入れたところで
東京に行く手段は何もない。


――薄暗い街灯。
身体にのしかかる疲労感。
そしてこの八方塞がり。


全てにイラついて舌打ちを漏らし
携帯をポケットから取り出した。

呼び出したのはもちろんアキの番号で
祈るように耳にあてると
すぐに聞こえたのは機械音。


電波のない場所にいるか
電源を切ってるか……。


ここまで走って来る途中にも
幾度となくこうやって電話したのに
結果はいっこうに変わらなくて。


――クソッ!
何で出ねぇんだよ。

ってあんな場所に置き去りにした俺が
こんな事思う権利なんかねぇんだけど。


繋がらない携帯を睨み付けて
ほんの1、2秒考えて
今度は別の番号を呼び出した。

緊張が一気に高まって
でも藁をも掴む思いで強く携帯を握る。


かけたのはもちろんユウキの番号。


永遠とも言える時間
呼び出し音が続いたかと思ったら
やがてそれは留守電に切り替わった。


揃って繋がんねーとか
嫌な予感で胸が押し潰される。


何を言うか用意してなかったけど
そのまま深く息を吸い込んで


「もしもし俺。
そこにアキいる?……っているよな。
俺がそう仕向けたんだから……」


――声、震えんな。


「……今頃こんな事言う権利なんか
ないってわかってるけど
――アキと話しさせて。
どうしても言いたいことがあるんだ。
だから……」


俺に、最後のチャンスを。


通話を終えて
ふうっと吐き出した弱気の心。