――――――

頭の奥でまだ音が鳴ってる。

――グルグルと
螺旋を描くように。


瞬きをすると
鼓膜が渇いてるのか
鈍い痛みが眼球に広がった。


……何だコレ。
こんなになっちまうなんて。

クソッと、ただ思う。


武道館を出てからすでに30分が経過。

アキと二人、
大勢の人に揉まれつつ電車に乗って
再び東京駅に戻って来たっていうのに

回りの景色にまるで現実味がなくて
心をどこかに置いて来た感覚がした。


未だ脳裏に焼き付いて
離れないのは
さっき見たラストソングのライブ画。


背後の巨大なスクリーンには
どこまでも広がる海の映像が映し出され

その前で光を浴びて歌うユウキの輪郭が
青の中に浮かんで、
輝きを放って。

その声を余計に特別なものとして
それぞれの深いところで響かせる。


……こんなんじゃ駄目だ。

こんなんじゃ普通に生きていけねぇと
頭を軽く振ってから
隣を歩くアキの手を引いた。

だけどその熱すぎる体温に驚いて
顔を横に向ける。


「アキ大丈夫か?
新幹線最終もうすぐ来ちまうから
ちょっと急ぐぞ」

「…………」


返事の変わりに俯いたまま鼻をすすって
コクンと頷くアキ。

その手を強く握り直して
俺は足の速度を早めた。


――おかしくなってるのは
俺達だけじゃない。

あの場にいた全員が俺達と同じように
現実の世界を取り戻すのが
困難になってる。


会場を出る時に
泣いてる奴を何人も見た。

理由なんかわからない
勝手に流れ続けるそれに
自分自身が困惑して。


それぐらい凄いものをぶつけられた。
――あのたった4人の人間によって。