――――――


「……ぇ、ねぇ」

「ん」

「起きてよ、リョウ」


まるで暗闇から救い起こすみたいな
柔らかな声が頭上から響いてくる。


「……ねぇ、藤ヶ谷君」


ぷっ!藤ヶ谷君って誰の事だよ。
……いや、間違いなく俺の事だけどさ。


そんな自問自答の突っ込みをしつつも
微かにダブる過去との記憶。


――そういえば最近もあったよな
これと同じような事。
しかも同じ声で――。


「……ん、ユリ……今何時?」


重い瞼をやっとこじ開けて
首の後ろを掻きながら
身体を持ち上げると案の定
ユリの緩やかな髪が視界に映り込んできた。

彼女の背後には
すでに見飽きた我が教室の風景。


あぁそうだった。

真面目に朝から学校に来てたものの
さすがに脳が限界をきたして
即効机に突っ伏して
今の今まで爆睡し続けてたんだ。

ついこの間、窓側から二列目の
一番後ろの席をクジで引き当てた自分に
この時ばかりは大感謝。


「もう昼休みよ。
また寝不足?
でも普通ならあんた学校じたいサボるのに。
珍しくちゃんと来たんだ」

「あぁ、だってさ――」


――だって昨日の今日だ。

もし行かなかったりしたら
カズマと会うのにびびってんのかと
思わるのがしゃくだったんだ。


なんて言い訳を喉の奥に飲み込んで
ゆっくりと顔を持ち上げると
額に何かの固いケースがぶつかった。


「いて」

「あのね、この前借りてたCD
返しに来たの。
すっごいよかった、
正に個性の塊〜って感じよね」


そして受け取った二枚のCD。

一枚は
オーストラリア大陸が中心の世界地図で
もう一枚は
ピンクのフラミンゴの求愛する姿。

こんな訳わかんねージャケットはもちろん
DeFautのインディーズ盤のCDだ。


そっか、この前ユリに貸してたっけ。

つか今日このタイミングでこれ。
なんてタイムリーって――

――あ。