それからすぐアキのマンションに到着して
明るく暖かなリビングに入った俺が
開口一番に言ったのは


「あれ?お前まだ飾ってんの?
クリスマスツリー」

「うん、なんか名残惜しくて」

「何だそれ?
いつまでも出してるといき遅れっぞ?」

「え!そうなの!?」

「イヤ嘘、適当に言った」

「は?何よそれ!
あーもーびっくりした!」


わざとらしいぐらい大袈裟に
ホッと胸を撫で下ろし

あのクリスマスの夜のまま
ライトを光らせるツリーの前に立って
オーナメントを細い指で突くアキ。

髪をサイドで緩く結び
パーカー姿のその細い肩を眺めながら
ふとある事実が頭に浮かんだ。


……っと待てよ?

て事は、年越しの時も
こんな状態だったのに
全然気付かなかったとか?

確かにあの夜は色々衝撃的過ぎたけど
俺余裕なさすぎだろ。
ありえねー。


あまりの格好の悪さに恥ずかしくなって
色んな記憶を振り払おうと
首の後ろを掻く俺をよそに
アキは口をすぼめてごまかすように言った。


「だってあの日はすごい楽しかったから。
いつまでも思い出に
浸ってたかったっていうか……
それに一人でツリー片付けるなんて
淋しすぎるじゃない?」


うん、……まぁ確かに。

でもこれからも
ここにくる度にこうチカチカされたら
色々と気が散って仕方ねー気がして


「そんじゃーせっかくだし今やる?
二人なら淋しくないだろ?
ほらアキ、これ入ってた箱持ってこいよ」

「でも……」


案の定、まだあがくアキに
苦笑い見せながら諭すように繰り返す。


「いーから持ってこい。
またクリスマス来たら
一緒に飾ってやっから」

「……わかった」


どっかの小学生みたいに渋々答えて
寝室に消えてくアキの背中を見送った後
俺はツリーのてっぺんにそびえる
一際大きな星に向かって手を延ばした。