昔から、本が友達のような感じだった。

自他認める口下手で、自分から知らない人に話しかけるなんて全く出来なかったし。

それと同時に根暗だということもあり、中学ではまともな友達なんて一人もいなかった。もちろん、好きな人も。

なのに。

「ねぇねぇ麻子っちゃん、なんの本読んでるんすか?」

高校生活二日目。朝っぱらから話しかけてくる佐々木に、元気だな・・・と思った。

「別に・・・ただの推理小説だが」
「へぇーっ!面白いっすか?俺、本読むと眠くなっちゃうんすよねぇー・・・」

別にそんなことは聞いていないが、と心で思う。

「・・・あぁ、まぁ」

はやく他の女子のところにでも行ってくれないだろうか・・・私はやはり人と話すのは苦手だ。


「佐々木くーんっ!」


声のした方を見ると、教室の入り口に3、4人ほどの女子がたむろしていた。

「はいはーいっ♪」

すると、私と話していたことなど無かったことのように入り口へ向かった。
なんなんだ・・・アイツは。もやっとした気持ちのまま、私はまた文庫へと顔を向けた。でも、全然内容に集中できない。
そりゃぁ、私にはあの女子達のような可愛げなんてないが・・・
・・・ダメだ、言ってて虚しくなってきた。

ふと入り口の方を向くと、一人、こっちを睨んでいる女子がいた。
もしかして、仲がいいと誤解されているのだろうか・・・
とんでもない、あんな奴とはかかわりを持ちたくなかったんだ・・・なんて、心で言い訳をしてみる。

そのまま見ているのも失礼か、と思いすぐ彼女からは目をそらしたが、いまだに刺さるような視線を感じる。・・・うぅ、私は無実なのに・・・

そのあとすぐに担任の先生が来て、彼女達が自分のクラスに戻ったおかげであの痛い視線は消えたが、これが毎日のように続くかと思うと正直気持ちが萎えた。

・・・早く、席替えがしたい。