*記憶のカケラ*

行きと同様に自転車に2人乗りをして帰る。

「今日もテスト同じ点数だったねぇ。」

と思い出したように亜梨紗が言った。

「俺は今度こそ勝つつもりだったんだけどな。」

「私もだよ。」

そう言い合いながら2人で笑った。

「今日は朝から風が気持ちいいね。海きっと落ち着いてる…。」

不意に亜梨紗がそういった。

亜梨紗の両親は海辺で働いている。
おじさんは俺らの島と本州とを行き来する人のために船をだす仕事をしていて、
おばさんは海辺にある船の受付場の事務をしている。
2人とも朝早くから出かけて行くので亜梨紗はうちで毎朝ご飯をたべて、夕方には2人で亜梨紗の両親を迎えに行くのが俺らの日課だった。

海は危険だから気をつけろといわれて俺らは育つ。

だから亜梨紗は毎日心の奥では不安になっているんだろう。

「今日もきっと何もなく2人とも無事でいるよ。」

そういうと亜梨紗は笑顔で

「ありがとう」

とお礼を言った。