「誰だよ…」


「…えっ?」


「あの男は誰だって聞いてんだよ!!」


風磨は声を荒げた。


いつも冷静で優しくて、お兄ちゃんみたいだった風磨が、こんなに怒るのは珍しい。


でもその瞳は、怒りというより悲しみのほうが感じられる。


「ちょっと風磨、落ち着いて…? ただの友達だから…」


友達。


自分で言ったのに、胸が締め付けられる。


「じゃあ、こんな遅くまで何してたんだよ? 危ねぇだろ?」


「…ごめん」


あたしが謝ると、風磨は深くため息をついて、ギュッとあたしを抱き締めた。