脱衣所はガラスが曇ったままで、安心して浴槽に近づくとバスルーム側だけが透明のガラスになり、部屋にいてソファーに座る蒼がしっかり見えた。


俺は蒼が気がつかないことを願いながら慌ててどっかにスイッチがないか、探した。


幸い、スイッチは家庭のそれのように脱衣所の入り口にまとまってあり、カチカチしてみると、バスルーム内が明るくなったり、ガラスが曇ったり変化した。


曇りガラスに戻してから、手早く汗を流し気持ちを落ち着かせるため、少しだけ、貯めた湯に入った。


『大丈夫だ、想いも願いも同じだ…』


時計を確認すると10分程経っていた。


体を拭いて置いてあるバスローブを着てから出た。


……下着は……はいた……。


「蒼、いいよ」


ソファーでスマホをいじっていた蒼に声をかけると肩が『ビクンッ』とした。


「うん…行ってきます」


笑顔だけど、それは緊張していた。


でも、嫌悪感はないようで、安心して…


『どこで何して待つ?』


初めてとは、一つ一つのたぶんどうってことない事にまで、悩むんだ。


きっと、蒼と経験を重ねて愛を伝えあったら、部屋の様子や何したらいいか…なんてことは考えることはなくなるんだろうな。


でも、この胸のドキドキ、蒼のことが愛しいから感じる昂まりはなくならない、そんな気がした。