俺は、自分の不注意から小学生だった妹の蒼に、いらないケガをおわせたことがある。


今では、それのお陰で『卵巣ガン』という見つけにくいものを早期発見できたんだから、恩人だと、言ってくれる妹。


でも、そう言われてもあの日から罪悪感は、小さくても残っていた…


中学に上がり体調があまり良くない蒼を側で見ながら、自分は何ができるんだろうかって考えた。


蒼が、周りの人間が辛いことがあっても笑顔を取り戻せるように、何があるのか調べた。


でも、すべての人を笑顔に…なんてかなりおこがましいことなんだと気がついた。


そして、自分がまずは心から笑顔でいて、隣に寄り添う人を笑顔に出来たらって思うようになる。


高校を決める頃に、蒼の通う病院の院内学級の生徒と知り合った。


返事もあまりしなくて、授業も真面目にはしていないような、6年の男子。


院内学級の先生に聞いてみたら、体を動かすのが好きだったのに入院で思いきり走れなくてくさってるらしいと、教えてくれた。


激しいものは当然だめだが、走らなければ少しはいいと聞いて、そいつを誘って中庭に出た。


「これで勝負しよう?
リフティングじゃないぞ?
何秒頭に乗せていられるか、だ!」


そう言った俺に最初はシラァ~っとした視線を向けた。