ぶつぶつ言っている隣の人間をみつめながら、
私は右手を自分の太股の横に下ろす。




その手は木のベンチではなく
冷たい私の知っている何かをとらえる。






もう一度、流と名乗ったそいつににっこり微笑み、
心の中で小さくため息をつく。






こんな気持ちになりたくはないのに、
顔のように心は言うことをきかない。

そして…心は複雑だ。



私の中の悪魔は、
相手がどんな反応をするか、
にやにや笑いながら待っている。

ほらみろ、人間なんて残念の固まりだ。
笑っちまえよ、って。


でも、私の中の天使は言うんだ。

なんで?どうして?

泣きたいよ、悲しいよ、寂しいよ、切ないよ。

何が基準なの?何がいけないの?、って。






「な~ん、明日菜ちゃんとデートしたいのに~。」





私はすっとベンチから立ち上がる。





そう、

私がそのベンチから立ち上がらなかった理由、




それは…、