ゲートを出ると、押し寄せるような人波に私は彼の手を強く握った。
絶対に離さないで。
この手が解けたら、もう二度と繋げない気がする。
だからお願い。
この手を、離さないで。
彼は左手に二人で一つのトランクを、右手に私を連れて、人波を泳いでいった。
その力はとても強く、けれど優しく包み込む暖かさがある。
そんな彼に、私は不釣り合いなんじゃないか。
彼と付き合い始めてからずっと続く不安が脳裏から湧き出し、全身へとじわりじわりと広がっていく。
握る手が不意に冷たくなって消えてしまったら、きっと私は耐えられない。
無意識の最果てに追いやった影が、私の足元へ忍び寄っていた。
「ジュリ………」
名を呼び、全てを覆うかのように両手を伸ばす。
「―――ジュリエ。どうした?」
意識は現実へと舞い戻り、覗き込む彼の瞳に私が映る。
「……何でもないよ」
そうか、と彼が微笑み大きく広がる窓からダークグレイの空を仰いだ。
「雨、止みそうにないな」
雨。
あの日も、雨だった。
忘れてない。
私は、忘れてないから。
「よし、車までダッシュ!」
私ははぐれてしまわないように、もう一度強く手を握る。
彼は私とトランクを引きながら、走り出した。
まだ人波に溢れるロビーを抜けて、雨に洗われる潮風の中を、ただひたすら真っ直ぐに。
絶対に離さないで。
この手が解けたら、もう二度と繋げない気がする。
だからお願い。
この手を、離さないで。
彼は左手に二人で一つのトランクを、右手に私を連れて、人波を泳いでいった。
その力はとても強く、けれど優しく包み込む暖かさがある。
そんな彼に、私は不釣り合いなんじゃないか。
彼と付き合い始めてからずっと続く不安が脳裏から湧き出し、全身へとじわりじわりと広がっていく。
握る手が不意に冷たくなって消えてしまったら、きっと私は耐えられない。
無意識の最果てに追いやった影が、私の足元へ忍び寄っていた。
「ジュリ………」
名を呼び、全てを覆うかのように両手を伸ばす。
「―――ジュリエ。どうした?」
意識は現実へと舞い戻り、覗き込む彼の瞳に私が映る。
「……何でもないよ」
そうか、と彼が微笑み大きく広がる窓からダークグレイの空を仰いだ。
「雨、止みそうにないな」
雨。
あの日も、雨だった。
忘れてない。
私は、忘れてないから。
「よし、車までダッシュ!」
私ははぐれてしまわないように、もう一度強く手を握る。
彼は私とトランクを引きながら、走り出した。
まだ人波に溢れるロビーを抜けて、雨に洗われる潮風の中を、ただひたすら真っ直ぐに。