窓から入り込む6月の雨空の薄明かりが、
朝を迎える度に私の奥底から込み上げてくる孤独感をさらに掻き立てる。
涙は、出なかった。
私の枯れてしまった涙が睫毛を濡らし、少し乾燥した肌を流れ、
こぼれ落ちる雫達がこの病室を埋め尽くして、私を殺してくれたらいいのに。
そうなれば私にどれだけ幸福な死が訪れるだろう。
終わりのない死への誘いが、やつれた全身を猛毒のように這い回る。
神様はどうして彼を連れていこうとするのだろう。
私には不釣り合いだから?
私には幸せになる権利がないから?
そうだと言うなら神様。
私は幸せにならなくてもいい。
だから、彼を―――トキオを返して。
「長谷部さん。調子はどう?」
病室の扉が開き、澱んだ空気の中に栄川先生が入ってくる。
「悪くないです」
私のケガは数ヶ所の軽い骨折と打撲傷だった。
けれど入院は二ヵ月もかかるらしい。
でもトキオは―――
「先生、トキオはいつ眼醒めるんですか?」
彼女は苦笑いを浮かべた。「いつ、とは言えないかな」
言葉を濁しながらも彼女は続けた。
「検査の結果次第よ。だから、今は何も………」
私は何も言わずに窓の外を見る。
降りしきる雨は、どうしたって止みそうになかった。
「先生。どうしたら、雨は止みますか?」
朝を迎える度に私の奥底から込み上げてくる孤独感をさらに掻き立てる。
涙は、出なかった。
私の枯れてしまった涙が睫毛を濡らし、少し乾燥した肌を流れ、
こぼれ落ちる雫達がこの病室を埋め尽くして、私を殺してくれたらいいのに。
そうなれば私にどれだけ幸福な死が訪れるだろう。
終わりのない死への誘いが、やつれた全身を猛毒のように這い回る。
神様はどうして彼を連れていこうとするのだろう。
私には不釣り合いだから?
私には幸せになる権利がないから?
そうだと言うなら神様。
私は幸せにならなくてもいい。
だから、彼を―――トキオを返して。
「長谷部さん。調子はどう?」
病室の扉が開き、澱んだ空気の中に栄川先生が入ってくる。
「悪くないです」
私のケガは数ヶ所の軽い骨折と打撲傷だった。
けれど入院は二ヵ月もかかるらしい。
でもトキオは―――
「先生、トキオはいつ眼醒めるんですか?」
彼女は苦笑いを浮かべた。「いつ、とは言えないかな」
言葉を濁しながらも彼女は続けた。
「検査の結果次第よ。だから、今は何も………」
私は何も言わずに窓の外を見る。
降りしきる雨は、どうしたって止みそうになかった。
「先生。どうしたら、雨は止みますか?」

