彩穂はただ、その背中を見つめていた。 自分の想いを叶えるということは、人の想いを断るということでもあって。 そんな立場に立ったとき初めて気づくのが、いろいろな儚さだった。 その儚さを知ることができたのは、雷のおかげだ。 優しい人になろうと実感できたのは、雷のおかげだ。 「彩穂、」 不意に出た風磨の声で我に返った彩穂は、急いで風磨を振り返る。