これでいい。

後ろを振り返る必要なんてない。

今自分にできる最大のことは、これ以上ないから。

なんでかな。

伝えられて嬉しいはずなのに、涙が止まらない。

これで、風磨は気を遣い、今の様に優しくしなくなるだろう。

優しさは、人を苦しませることがあると気がついたはずだから。

優しい風磨は、自分を苦しませないようにしてくれるはずだから。



彩穂は止まらない涙を流しながら、練習している部員たちの元へ戻る。




「あ、どこ行ってたのー?彩……」




一人の部員が、そう言いかけて驚いた。

涙を流し、呼吸を荒くした彩穂がいたからだ。