彩穂は、こんな時にも風磨を思い出した。 こんなとき、風磨ならどんな風に助けてくれる? 助けて、風磨――。 「すいません、離してください」 彩穂の頭上で声がした。 涙が引く。 嘘のようだ。 願いが届いたのか。 もしかして、来てくれたの? 彩穂は、期待を膨らませて顔を上げた。