それから一刻ほど後。
 青年は小豆の袋と、もう一つ砂糖の袋を抱えて、ほくほくと歩いていた。

 そのとき。

「おいこら!」

 川縁を歩いていた青年の後ろから、声がかかる。
 振り返ると、先程絡んできた若者たちだ。

「何じゃ、まだおったのか」

 相変わらず無表情に、青年は彼らを見る。

「馬鹿にしやがって! さっきは上手いこと俺たちを煙に巻いてくれたが、今度はそうはいかねぇぜ!」

 若者が、匕首を抜いて怒鳴った。
 他の者も、腰を落として構える。
 青年は、少し眉を顰めた。

「何を言うておるのじゃ。お前らが砂糖を買いに行けと言ったのであろうが」

 ほれ、この通り、と、片一方の袋を掲げて見せる。
 ぴき、と若者の顔が引き攣った。

「ふっふざけるんじゃねぇってんだ!!」

 言いざま、匕首を振るう。
 青年が掲げていた袋が匕首によって裂け、砂糖が、ざっとこぼれた。

 ほんとに砂糖だったんかい、と心の中で突っ込みながら振り返った若者は、青年の表情に動きを止めた。