たんぽぽ

気力のない目で声のするほうを見上げた。




そこにいたのは、あたしを褒めてくれたあの男の子。
顔にあの絆創膏を貼り付けたあの男の子だった。




『何してんだよ!?風邪ひくぞ!?』




男の子はあたしに向かって叫んだ。
あたしは応えられなかった。




ショックが大きすぎて言葉が出てこなかった。




『あんたっ・・・・!どーしたんだよ?その手の傷!!』




男の子はあたしの指から流れるたくさんの血を見て驚いた。
まだ手の中に握ってあったガラスの破片を全て離してくれた。



痛みなんてない。
ただ赤い血がどくどくと流れていくのをずっと眺めていた。




男の子は自分の制服のシャツを破いて応急処置をしてくれた。
白いそのシャツはすぐに真っ赤に染まった。




『とりあえず、行くぞ!!』




男の子はあたしを立たせると、優しくおぶってくれた。
背中が妙に温かくて、
その背中がとても大きくて、あたしは思わず涙が溢れてくるのを
止められなかった。



(奈々・・・・)




あたしはその背中に安心したのか、静かに目を閉じた。





茜くんの夢を見た。
あたしをおぶってくれてるのは茜くんで、
茜くんがあたしに向かって笑いかけるの。



―もう大丈夫だよ―って・・・。



あたしが目を覚ますと全部夢で、
そこには奈々が笑って待っていてくれていたんだ。



そんな、そんな都合のいい夢をみたんだ。