「おっ。樹里。オレも電話しようと思ってた」

「どうして?」

「定時で帰れるから、一緒に帰ろうと思って」

「ごめん。今日は先に帰ってて」

樹里の声のトーンの低さに嫌な予感がした。

「何で?」

「知り合いが入院したの。お見舞いに行きたいから」

「病院どこ? 送るよ」

「いいよ。自分で行くから」

オレは、更に嫌な予感がした。

「見舞いって男だろ?」

「えっ」

「会社の人?」

「ううん」

「とりあえず、駐車場で待ってる」

オレはそう言い残して、一方的に電話を切った。

樹里の顔を見て話がしたかった。