「佐久子さん、私はまだ書いていいのですか。一度も認められなかったと言うのに」
「ええ。わらわに話を書いてくださったら死んでも良いと言いましたが、撤回しますわ。
太一郎さんのお話は暖かいです。他の方の目にも触れるべきですわ。
認められなかったならば認められるまで書き続けてください。わらわからのお願いです」

その前に身体を治してからにしてくださいね、と付け加えて佐久子は笑う。
ふと窓を見れば雪が静かに降り始めているのが分かる。やはり降ったのか。

「そういえば今日は基督(きりすと)教では生誕祭というものでしたっけ。
信仰している友人が教えてくれました」
「それは新たな約束ですか」
「え」

自分の言った言葉とは全く違う言葉に佐久子は戸惑う。
だから私は重い身体をゆっくり動かし、手を出すと小指を差し出した。