「綺麗な川ですよね」

どんなに書いても実らない。
それならばいっそこの橋から落ちてしまえば楽になるだろうか。
そんな風に漠然に考えていると、背後から女の声が聞こえてきた。
振り向けば、桃色の着物を着た女の姿があった。

「悲しい事があるとよく此処に来るのです。
川の流れるこの音と、落下した葉が流れてゆく姿を見ると、心が落ち着きますわ。
貴方は一体何をされていたのですか」

私の横に並び、頼んでもいないのに自分が此処を好きな理由を語ったかと思えば、
今度は私に話をふる始末。突然振られたものの、私は答えることが出来なかった。

死のうと思ってやってきました。

とは彼女には言えない。だから偽りでも良い。
何か良い理由はないものかと思考を巡らせてみると、突然女は私の右手を手に取り、眺めだした。