「緋葉」



いつも嬉しそうに自分の名を呼ぶ姿は、神隠しの纏う異質な雰囲気は一切なく、ただの少女に過ぎない。



ふと思う、“彼女”こそが本当の――“被害者”じゃないか、と。



緋葉は黙ったまま正面を見つめていたが、夕羅の方に振り返る。



幾分か驚いていた夕羅だったが、すぐ笑顔に変わった。



「緋葉」



緋葉の中に様々な思いが去来する。本来なら許したらいけない、冬音は、冬音は――――



「――――っ」

「…………あかは?」



次の瞬間、緋葉に突然抱きしめられた夕羅は不思議そうに愛しい者の名を呼んだ。



今まで緋葉からこうされた事は一度もなく、夕羅は怪訝そうに緋葉を見た。