歩だけは、絶対元の場所に還さなければ。



夕羅の支配する世界で自分は、そんなに役に立たないのは百も承知で、緋葉はずっとこの事を思っていても口にはださなかった。



低い可能性でしかも自分の思いを口にしたところで、確実なわけじゃない。



とうとう口をつぐみ病んでしまった歩は両膝を抱え込み、歩はすべてのものから心を閉ざし見なくなってしまった。



緋葉は自分と似た存在の、歩にどこか拠り所と安心感を覚えていたかもしれない。



いつもの定位置から緋葉は見下ろしていた、ここはどこかあの場所に似ているような気がする。



そんな事を考えているとふっと夕羅が音もなく現れ、緋葉に後ろから抱きついてきた。