冬音の表情は出会った頃と違っていた。その些細な変化に気づいたのは雪芭だけで、隼政は気づいていない。



「これでようやく私の役目も終わり……真冬が、来てくれた。最後の最後、あなたたちを助けるためにあの力を使って」



隼政はあの力を知っている、自分を助けるために使った神隠しの――



「……真冬は、真冬は」



隼政は水露がどれだけ真冬が好きだったか知っている、そして自分自身も心底慕っていた。



「……もう、一緒にいられないのです。真冬と私は何処に還るのかわかりませんが、それでも、よかったんだと思います」

「………………はい」



隼政は頷く。それでも、胸中には不条理な思いが渦巻く。



「冬音さん、ここは過去じゃなくて夢ですよね?」

「ええ。閉じた夢の中、私は魂だけをこの身体に渡しずっと、真冬を待っていた――この時のために、真冬の力によってここは壊れ始めたわ。走って、立ち止まらず。そうすれば、還れるから」

「はい、ありがとうございました。隼政」

「ああ……」



走り出す雪芭に隼政も続く。



隼政は一度だけ振り返り叫んだ。



「冬音さんと真冬の事、忘れません!!!」



冬音は一瞬驚きそれから一言呟いた。






「私たちも」






忘れない。






縁があれば、また逢えるはずだから。