雪芭の思考が黒く染まろうとしたその時、隼政がおもむろに口を開く。



「なあゆっきー」

「……なに?」

「俺さ、思うんだけど。神隠しだけを排除すれば本当に全部丸く収まって、めでたしめでたし、ってなるのかなって」

「だから?」



雪芭の冷たい口調も気にせず隼政は必死に何かを伝えようとしている。



雪芭は携帯をたたみ、隼政に向き直る。



「俺たち人にだって、責任がないわけじゃないんだよ。神隠しだけを悪といって、神隠しだけを否定して切り捨てる……やっぱりそれだとおかしいと思う、……だからといって、俺の考えが正当だとも思わないけど」



雪芭は黙ったまま耳を傾けそれからふっと笑った。全部が氷解するわけじゃない、それでも今はそれだけで十分だった。



「隼政もたまには役立つね」

「ちょっ!それひどくない!?」

「受け入れるのは難しいけど、否定し続けるオレにもやっぱり非はあったのかも。それと、オレも考えてた事がある」



雪芭がそう言った時、部屋のドアがゆっくり開き小花柄の真っ白なワンピースの冬音が微笑む。



雪芭と隼政は無言のまま彼女を見つめた。