冬音を助けたい。



ただ一つの自分の願いのために、隠れの町で築いてきた日常すべてを失った。



水露と隼政の事だけが唯一気がかりで、自分の願いのために犠牲にしておいて、まだ捨てきれない今まで一緒に過ごした思い出。自分の願いを捨てていたらあったかもしれない、幸せな日常。



今となってはもうずいぶん遠いものになってしまった。



自らが強く望む事で、神隠しに遭った。緋葉と接触し冬音を助ける術は夕羅――神隠しと対峙し、一か八かの賭けにでろというものだった。



シクカミカは緋葉が神隠しという長い時を生き、得た力らしい。



その力の半分を緋葉は真冬に渡し、冬音を“神隠し”からも“ヒト”からも助けてほしいと、言われ真冬は迷う事なく頷いた。



緋葉は最後にこう言った。






「神隠しを終わらせる、例えどんな結末になっても。生きながらえたけど、結局こうしてまた悲しみを生んでしまった。ヒトの犯した罪はヒトが、終らせなければ」






かなしく寂しい笑いを浮かべながら。