声にならない声で雨芭はなんとか言葉を紡ぐ。



口の中は血の味がする。村の大人たちに殴られた時に口を切ったのかもしれないが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。



「あか、は……をいけ、にえにするつもりだったんだ……巫女様が来る前から、そのつもりで……そしたら、神隠しが……巫女様、どうしたらいいんだ!!?」

「いけない!雨芭、緋葉を頼みますっ」



血相を変えた冬音が村の方に駆けて行くのを見て、雨芭が叫ぶ。



「巫女様!?神隠しが、いるのに…………」

「神隠しって……どういう事だ?」

「……緋葉をいけにえにしようとした村の連中を、俺たちとそんなに変わらない女の子が、全員殺した」

「……冬音が危ない、いこう雨芭!!!」



衝撃的な真実を知らされても動ける理由を緋葉は知っている。






『冬音』という、恋仲の愛しい少女のためだった。






「冬音……今、行くからな!」