「緋葉」



名前を呼ばれた方を振り返る。そこに立っていたのは、緋夢の村で唯一仲のいい雨芭だった。



藍色の着物の袖を風が揺らす。



「今日も行くだろ、いつもの場所」

「ごめん、今日は――」

「あ――はいはい、わかってるよ。巫女様に会うんだろ、どうせ」

「ああ」



あまりにも嬉しそうに頷く緋葉にこれ以上何も言えず、雨芭が行けばと促すと緋葉は頷きまっすぐに駆けていった。



「…………不気味な色の空、だな」



血のように赤い空。



それが嫌な予感を掻き立てるのだろうか、雨芭の中から不安が消える事はなかった。