黒髪の少年と自分がお社の屋根で無邪気に笑い声をあげている。



一面に咲いた彼岸花。



「…………あの時の、彼岸花?」



雨芭の一人言に黄昏鏡真は頷く――それは肯定だった。



雨芭は額に手をやる。



「…………あか、は。あれは緋葉?」

「そう、僕はあの時の彼岸花で、雨芭くんと緋葉は最果ての村――緋夢の村の人間。雨芭くんと緋葉はいつも一緒で、仲がよくて、僕はそんな二人を見るのが好きだった」

「――――っ」

「僕がこうして、人の形になれるのは――彼岸の巫女のおかげ。彼女が力を僕に分け与え身体をくれ、彼女は僕に神隠しが終わらない現実を託した――最悪の中での最良、になるように」






…………そうだ、俺は現実(ここ)の人間じゃない。






緋夢の村の人間で、彼岸の巫女が現実へと渡そうとした時――そうだ…………






彼岸花に人の形を与え、現実へと渡した。でも、俺は神隠しに掴まった――――






雨芭は混乱はしているが、だんだん自分の状況を思い出す。






あの日の悪夢と共に…………