声の方に振り返れば、朱色の落ち着いたワンピース姿の熊野明日香が立っている。



袖は振り袖のようになっていて、頭には左右朱色のリボン。腰には帯のようなものが巻いてあり後ろで結んである。彼女の服装は相変わらず個性的で、明らかにこの隠れの町では浮いていた。



「よかったあ〜取り込まれる前に間に合って。心配して来て正解だったねぇ」

「取り込まれる……って、何に?」

「ここだとヤバいんだよね。だから、カフェがあるんだよあめちゃん」

「……意味わかんないんだけど」

「いいからいいから」

「うわっ」



熊野明日香におもいっきり手を引かれ、奥へ奥へと進んでいく。



突然霧が発生し視界が霞む。



一体何がどうなっているのか。雨芭はすっかり混乱してしまい、今の思考はまったく役に立たずただ、目の前の少女だけが頼りだった。



とは言っても、相手が相手なだけに不安が尽きなかったが。