雪芭の失踪。



それが雨芭の心をしめつけ苦しめる。本来あるはずのない現実、その現実で得た幸せが、雪芭だった。



「…………雪芭」



浮かんでは消える雪芭の顔。あまり口数は多くはないが、それでも雨芭にとってそんな事は関係ない。






大切な――――弟。






そろそろ寒くなってきた雨芭が部屋に戻った丁度その時、枕元に置かれた携帯がブルブルと震える。






小さな画面に映し出されたのは、熊野明日香からのメールを知らせるものだった。